フィブロイン・フィルムの電場駆動を検討するに先立ち、いくつかのポリペプチドおよび、関連化合物(ポリウレタンを含む)について電場応答性を検討し、一般的な傾向として応答性のあることを確認した。フィブロインのランダムコイルフィルムでは顕著で素早い応答を認めた。電場方向の変位は微少だが、曲げ電歪挙動では不規則だが鋭敏な応答を生じることが見いだされた。一方、β-ヘリックス構造でも応答するが、ランダムコイルよりも小さい変位を生じた。ゲル化フィルムでは電流のリ-クを十分には克服できていないので印加電圧の低い条件でしか測定できていない。その結果、鋭敏ではあるが微少な変位を検出し、ゲル化や可塑化による大きな可能性が示唆された。可塑剤添加量の増加は絶縁性を低下させ十分な駆動電場を印加できなくするため情報を得にくい。可塑剤量の低下によっては、マクロ的には均質なフィルムを得られるが、駆動の挙動に複雑さが現れることから、ミクロ的に不均質であることが示唆された。以上の結果、駆動の不規則性とフィブロインの高次構造の関係の解明(現在進行中)が必要であるという問題点が明らかになったが、同時に、分子間相互作用の低いランダムコイルでの駆動がβ-ヘリックス構造の場合よりも大きいことを明らかにし、この蛋白質が今後の駆動材料として大きな可能性を持つことを示すことができた。
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