緑藻クラミドモナスから、培養中のCO_2濃度が空気レベルの0.04%に低下すると生育速度が低下する株(高CO_2要求株:低CO_2濃度環境に適応できない変異株)のスクリーニングを、クラミドモナス核ゲノムにコードされる硝酸還元酵素遺伝子(nit1)を遺伝子タギングの指標として用いて行った。得られた変異株では、無機炭素濃縮機構を担うタンパク質をコードする遺伝子や、CO_2濃度の低下を細胞が感知してから無機炭素濃縮機構の発現誘導が引き起こされるまでの、シグナル伝達系路に関与する新しい遺伝子が変異していると考えられた。そこで実際にnitl遺伝子の挿入変異によって低CO_2濃度条件で増殖が遅くなった株を6株単離した。得られた変異株の中には、光合成の無機炭素に対する親和性が低下した株(K_<1/2(Ci)>値が低CO_2条件でも高CO_2条件と変化ない株)C5株や、CA遺伝子に変異はないのに、その発現が低CO_2条件で全く誘導されない株(C16株)も得られた。 C5株については、クラミドモナス核ゲノムDNAに対してサザン分析を行ったところ、遺伝子導入時に用いたプラスミドDNA中のベクター部分が、変異株のゲノムに1コピー挿入されていることが明らかとなった。そこで、変異株から全DNAを抽出し、制限酵素で切断後に再環化した後、大腸菌に形質転換を行ったところアンピシリン耐性コロニーが得られた。この結果から、変異の原因遺伝子をプラスミドレスキュー法によって単離できたと考えられる。得られたクラスミドモナスゲノム断片の配列を決定したところ、これまでには報告のない新規な遺伝子をコードしている可能性が示唆された。
|