1、線毛発生即ち線毛細胞の形成は、fibrous granuleと呼ばれる顆粒構造の出現に始まり、これを材料として中心子が複製、中心子は細胞先端部へ移動して基底小体となり、その遠位側より線毛が伸長するという一連の経過をたどる。線毛発生における伸長線毛の物理的保持、alar sheetsの形成に関与して、線毛基部の細胞膜の管状陥凹により transitional tubules が形成されることを解明した。 2、根小毛 striated rootlet は、基底小体に付随する横紋を有する細線維構造である。根小毛の形成にfibrous granuleが密接に関与し、形成途中のv小毛は proximal conical part と distal fibrillar part の2つの部分からなり、後者は前者に移行することを解明した。 3、ヒト卵管線毛細胞の細胞先端部領域を粗精製し、これを抗原としてラットに免疫し、根小毛を特異的に認識するモノクローナル抗体(R4109、R4901)の作製に成功した。ウエスタンブロッティング法及び免疫電顕法の結果から、この抗体は 58kDa の分子量の蛋白質を認識し、この 58kDa 蛋白質は根小毛の横紋の主要構成要素であることを明らかにした。R4109をもちいた線毛発生細胞の細胞生物学的検討により、fibrous granuleは上述の 58kDa 蛋白質から構成されることを見いだし、根小毛の形成にfibrous granuleが関与することを明らかにした。 4、R4109は、卵管上皮、気道上皮、脳室上衣の線毛細胞に存在する根小毛に加え、網膜視細胞、血管内皮細胞、結合組織の線維芽細胞等の孤立線毛に付随する根小毛をも認識した。またPtK2細胞、HF細胞、BAEC細胞等の培養細胞における解析から、多くの培養細胞では孤立線毛の形成とは無関係に根小毛が形成されることを明らかにした。
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