1)構造形成におけるアイソフォーム選別と蛋白質相互作用:非筋および速筋型ミオシン軽鎖のキメラcDNAを培養心筋細胞に導入し、蛋白質のどの部分がアイソフォームの選択的集合に重要であるかを調べた。本来非筋型軽鎖は筋原線維に局在しにくいが、第2EFハンド内の12個のアミノ酸を非筋型から速筋型のものに置換すると筋原線維に組み込まれるようになることから、この部位がミオシン軽鎖アイソフォームの選別に重要であることが判明した。これらのアミノ酸の違いがミオシン重鎖との結合部位の位置関係に影響して両者の親和性に差が生ずることにより、アイソフォームの選択的集合が行われるものと考えられた。 培養心筋および線維芽細胞に各タイプの軽鎖cDNAを導入することにより、ミオシン重鎖・軽鎖間の親和性に対する重鎖アイソフォームの影響を調べた。心筋型重鎖に対する軽鎖の親和性は、速筋型>遅筋・心室筋型>遅筋型>非筋型の順に高かったが、非筋型重鎖に対しては速筋型>遅筋型>遅筋・心室筋型>非筋型の順であった。このことから、蛋白質どうしの親和性は双方のアイソフォームに依存することが明らかになった。また速筋型軽鎖はどちらの重鎖に対しても高い親和性を示すことから、このアイソフォームは各種の重鎖に強く結合し速筋に適した機能を遂行するように進化したものと考えられた。 2)蛍光蛋白質(GFP)融合筋蛋白質の発現による構造形成動態の解析:ミオシン軽鎖およびトロポニンにGFPを組み込んだcDNAを培養心筋細胞に導入し、発現したGFP融合筋蛋白質の蛍光を高感度顕微鏡カメラでとらえることにより、生きた細胞内での筋蛋白質の動態を観察した。筋蛋白質は発現1日目には細胞質内に瀰漫性に存在するが、その後時間経過とともに筋原線維内の所定の部位に局在するようになった。今後、このような動態を超微細形態レベルでさらに詳細に解析する予定である。
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