原子力間顕微鏡および低角度回転蒸着法を用いて、ヒト免疫グロブリンE(IgE)受容体α鎖の細胞外領域部分の表面構造を観察した。さらに、この受容体がIgEと結合する際に起こる構造変化を解析する目的で、IgEのみと受容体-IgE結合体の表面構造も観察し、比較した。 [結果と考察] IgE受容体α鎖の際妨害領域部分はAFMでは、ほぼ球形の粒子(直径約13mn)として観察され、低角度回転蒸着法を用いると、中央部分の凹んだいわゆるド-ナツ形(直径約12mn)として観察された。IgEは一方の端が大きい長楕円形(長径約50mn)として観察され、しばしば屈曲した形をとっていた。受容体-IgE結合体では、IgEの大きい方の端が更に大きくなるようであった。 AFMのカンチレバ-の曲率半径は約10mnであるので、現時点では、この程度の分解能が限界ではないかと考えられる。低角度回転蒸着法にしても、影付けに用いられるプラチナによって分子が被われて、相当大きくなっていることが考えられる。 受容体-IgE結合体に燗しては、種々の生化学データより、受容体がIgEの重鎖(heavy chain)に結合することが予想されているので、IgEの大きい方の端は重鎖であり、その部分に結合した為に、よりつか大きくなった可能性が示された。受容体がIgEの重鎖のどの部分にいくつ結合できるかについては、AFMの高分解能がさらに進めば、十分に解析し得ると考えられる。
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