研究概要 |
哺乳類の精子は次世代に遺伝情報を伝達するために特殊化しており、最も小形な細胞に属する。また極端に濃縮した核を持ち、細胞質は極く僅かしか残されない。これは受精に際し、卵を包む透明帯の通過に不可欠である。精子形成過程で起こる体積減少の大部分は水の消失によって説明できる。しかし、これまで排水の経路については解明されていなかった。 最近見いだされたAquaporin 7(AQP7)は26kDaの膜貫通性蛋白質であり、精巣に最も多く発現し、他の水チャンネル分子のアミノ酸組成と高い共通性をもっていた。またXenopus卵に強制発現させると浸透圧による水の透過性が10倍に上昇した(Ishibashi,Suzuki-Toyota et al 1997雑誌論文参照)。 ラット精巣におけるAQP7の発現様式と局在を免疫組織化学的に調べたところ、AQP7の陽性反応は先体胞期の精子細胞に始めて出現し、成熟期に精細管腔側に移動した精子細胞の細胞質とそこを被う細胞膜に最も強く見られた。一方細胞質のほとんど無い頭部や尾部末端側は陰性であった。精上皮を離れた精子では細胞全体で反応が減少していた。 これらの結果からAQP7は精上皮の管腔側に移動した精子細胞が血漿より約一割高張な精細管内腔液に曝された時に細胞内から水が流出する過程にチャンネルとして機能し、精子細胞の急激な体積減少に関与すると考えられる(Suzuki-Toyota et al 1999雑誌論文参照)
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