1)筋様細胞内の細胞骨格分子と精子形成能との関連 ラット精巣を用いて、アクチンフィラメントやα-actininなどの細胞骨格分子の局在について調べた。生後発達過程において、筋様細胞内のアクチンフィラメントは、まず精細管長軸に対し平行に走り、丸い精子細胞が出現する生後30日頃から成熟ラット精巣で見られる格子状構造が形成されることがわかった。この格子状構造が発達するにつれ、α-actininの規則正しい局在が見られた。精子形成能のない突然変異マウス精巣や精子形成を阻害した停留精巣では、筋様細胞内のアクチンフィラメントやα-actininは乱れ、筋様細胞内の規則正しい細胞骨格構造は、正常な精子形成に必須であることが示唆された。 2)ヒト精巣における精細管筋様細胞の構築 ヒト精細管を取り巻く筋様細胞について、共焦点レーザー顕微鏡を用いて調べた。ヒト筋様細胞は筋様腺維芽細胞とも呼ばれ、マウスやラットのそれと異なり、複雑な形態で何層にもわたって存在していた。筋様細胞ないのアクチンフィラメントは、内層と外層とで、その走向が異なることがわかった。 3)マウス精巣における細胞骨格タンパクとFynチロシンキナーゼ さらに、精子形成における細胞骨格タンパクの関与に関連して、以下の予備的実験を行った。近年、細胞骨格は単なる細胞の骨組みではなく、ダイナミックな変化を示す細胞間と細胞内をつなぐ情報伝達系の接点とみなされている。また、Srcファミリーチロシンキナーゼは細胞骨格タンパクとの相互作用を通じて、細胞の増殖・分化の制御を担うシグナル伝達に関与しているとされる。そこで、Srcファミリーの一員であるFynチロシンキナーゼについて、細胞骨格タンパクとの関連に注目しつつ、マウス精巣における発現について調べた。
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