1)生後発達過程における筋様細胞内のアクチンフィラメント構造 生後15〜40日のラット精巣から精細管を単離し、FITC標識ファロイジンとヨウ化プロピジウムとで二重染色して共焦点レーザー顕微鏡で観察した。成熟ラットの精細管筋様細胞で見られるアクチンフィラメントの格子状構造は、生後27日頃に形成されることがわかった。このとき精細管内には精子細胞が出現する。それ以前の若幼な精巣では、格子状ではなく、平行に走る(精細管の長軸に対して垂直方向)アクチンフィラメントが筋様胞内に見られた。 2)筋様細胞内のアクチンフィラメント構造と精子形成能との関連 ラットを用いて実験的に停留精巣を作製し、精子形成能を阻害したところ、筋様細胞内のアクチンフィラメント束は細くなり、その走行も乱れた。また、造精機能をもたない突然変異マウスjsdの精細管筋様細胞について調べたところ、やはりアクチンフィラメントの構造は正常マウスに比べて乱れていた。これらの結果から、筋様細胞内の規則正しいアクチンフィラメント構造は正常な精子形成に必須であることが示唆された。 3)マウス精巣における細胞骨格タンパクとFynチロシンキナーゼ さらに、精子形成における細胞骨格タンパクの関与に関連して、以下の予備的実験を行った。近年、細胞骨格は単なる細胞の骨組みではなく、ダイナミックな変化を示す細胞間と細胞内をつなぐ情報伝達系の接点とみなされている。また、Srcファミリーチロシンキナーゼは細胞骨格タンパクとの相互作用を通じて、細胞の増殖・分化の制御を担うシグナル伝達に関与しているとされる。そこで、Srcファミリーの一員であるFynチロシンキナーゼについて、細胞骨格タンパクとの関連に注目しつつ、精巣における発現について調べた。
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