細胞内分泌装置の中心的役割を担うとされるゴルジ装置の立体構造を明らかにするため、レクチンを用いてマウス十二指腸腺細胞のゴルジ装置のもつ糖鎖を蛍光多重染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察することにより3次元構造解析を行った。平成8年度の研究結果から、ゴルジ装置は核上部にドームをかぶせたような形で存在すること、シス側層板がドーム状のネットワーク構造を形成して細胞質とゴルジ装置との境界をつくり、それを裏打ちする位置に中間層が配置し、さらにその内側にトランス側層板が配列していることが明らかになった。そこで9年度はまず、ゴルジ装置の内側に形成されると考えられる分泌顆粒がどのように細胞頂部へ輸送されるかを検討した。レクチンの2重染色を組み合わせて検討した結果、分泌顆粒がゴルジ装置の内側にまず形成されることが確認され、また、顆粒が層板のつくるネットワークの網目を通過して細胞頂部に移動するということで示す結果を得ることができた。レクチンの3重染色を行った観察でも、これまで考えてきたゴルジ層板の配列を支持する結果が得られた。次に、その他の細胞としてマウス下行結腸の杯細胞で同様の観察を試みたところ、粘液を盛んに生合成していると考えられる腸陰窩底部の細胞では十二指腸腺細胞とよく似た3次元構造をもつゴルジ装置が観察された。以上のことから、コンフォーカルレーザー走査顕微鏡を用いて細胞内小器官を観察することにより、電子顕微鏡では得られなかった3次元構造の新しい知見を得ることができた。 ゴルジ装置を中心とする分泌装置の機能を探る試みとして、ラベル物質を封入したリポソームを作製する検討も平行して行ってきた。成果の発表には至っていないが、基礎的条件や操作法に関するデータは蓄積しつつあるので、今後引き続き研究を進めていく考えである。
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