研究概要 |
母体の免疫グロブリンIgGがFc受容体を介するトランスサイトーシスによって胎盤関門を通過する胎児受動免疫成立機構の細胞生物学的理解を目的として、IgG・Fc受容体複合体の選別輸送を担うエンドゾームの機能と構造をラット卵黄嚢上皮細胞をモデルとして調べた。初年度(平成8年度)には、蛍光標識トレーサー分子取り込み・共焦点レーザー顕微鏡画像解析の方法で、IgG、トランスフェリン、デキストランの細胞内選別輸送経路、エンドゾーム内部pH、低分子GTP結合蛋白(rab4,rab5A,rab8)の局在、brefeldinAの輸送阻害作用を明らかにした。トレーサーは選別エンドゾームを経由してトランスサイトーシス、リサイクリング、ライソゾーム選別へと振り分けられた。選別エンドゾームの内部pHは、IgG・Fc受容体複合体形成の至適条件に一致してpH61(【plus-minus】0.2)であった。rab4, rab5Aは取り込まれたトレーサー分子に一致して、主にこの選別エンドゾーム上に(一部リサイクリングエンドゾーム上に)共存した。brefeldin-Aはトランスフェリンをリサイクリングエンドゾームに、IgGとデキストランを選別エンドゾームに滞留させ、以後の輸送を部分的にブロックする作用を示した。これらの結果は、pH61(【plus-minus】0.2)に制御された選別エンドゾームの内部酸性環境でIgG・Fc受容体複合体はプロテアーゼから保護され、IgGは無傷で胎児側にトランスサイトーシスされると予想したBrambel's Hypothesisを支持し、裏付けるものである。rab4,rab5Aはこの選別エンドゾーム(およびリサイクリングエンドゾームの一部)と輸送小胞の融合を制御する分子スイッチとして機能していることを示唆している。次年度(平成9年度)には、トレーサーとFc受容体、プロトンポンプの微細局在との相関を指標にしてエンドゾーム・サブコンパートメントの構造をさらに詳しく調べる。また、抗rab蛋白抗体の細胞内微量注入によってrab4, rab5Aの作用部位をつきとめ、brefeldinAの作用部位との相関を明らかに
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