前年度にひきつづき、胎児受動免疫成立機構の細胞生物学的理解を目的として、組織培養下ラット卵黄嚢上皮細胞のIgG・Fc受容体選別輸送機構を共焦点レーザー顕微鏡免疫組織細胞化学・画像解析の方法で調べた。1.IgGトランスサイトーシス経路とIgG・Fc受容体局在との異同、トランスフェリンおよびその受容体の分布を比較検討した。また、2.小胞形成を特異的に阻害するブリフェルディンの存在下で同様の観察を行い、その影響を検討した。その結果、選別エンドゾームでのIgG・Fc受容体複合体形成後、この複合体のかなりの部分はブリフェルディンの影響を受けずにトランスサイトーシスされるとの結果を得た。この結果は、コート蛋白依存性のトランスフェリン・受容体複合体リサイクリングに対するブリフェルディン阻害作用とは対照的に、IgG・Fc受容体複合体がクラスリンやCOPなど小胞コート蛋白の関与を受けずに選別エンドゾームから離出する新たなメカニズムがあることを示唆した(報告論文投稿中)。さらに、3.ガラス電極・マイクロマニピュレーターを用いて抗Rab蛋白抗体の細胞内マイクロインジェクションを試み、Rab蛋白機能ブロック下でのIgGトランスサイトーシス、トランスフェリンリサイクリングを観察した。抗Rab4抗体、抗Rab5抗体ともにブリフェルディン処理後のエンドサイトーシス像と識別しがたいトレーサー分布像を示した。この結果は、Rab蛋白の制御部位とブリフェルディンの作用部位がともに小胞の形成から融合にいたる一連のステップの近い位置にあることを強く示唆する(報告論文投稿準備中)。今後、この制御・作用部位を共焦点レーザー顕微鏡の光学的分解能を越えた微細構造レベルで同定するために、電子顕微鏡による構造解析を計画している。
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