研究概要 |
新生児受動免疫成立機構の細胞生物学的理解を目的としてIgG・Fc受容体複合体を輸送するエンドゾームの機能と構造を培養ラット卵黄嚢上皮細胞をモデルとして調べ、以下の結果を得た。 1.細胞に蛍光標識トレーサー(デキストラン、トランスフェリン、IgG)を取り込ませ、共焦点レーザー顕微鏡蛍光レシオメトリーを行ってエンドゾーム内部pHを計測した。選別エンドゾーム内部pHは6.1(0.2)でIgG・Fc受容体複合体形式の至適条件に一致した。2.トレーサー取り込み過程を画像解析し、細胞内選別輸送経路、GTP結合蛋白(rab4,rab5A,rab8)との共存関係を調べた。トレーサーは選別エンドゾームを経由してトランスサイトーシス、リサイクリング、ライソゾーム経路へと振り分けられた。rab4,rab5Aは取り込まれたトレーサー分子に一致して、選別エンドゾームとリサイクリングエンドゾームに共存した。3.経路特異的な輸送阻害作用を示すbrefeldin-Aは、トランスフェリンをリサイクリングエンドゾームに、デキストランを選別エンドゾームに滞留させ、以後の輸送を部分的にブロックした。IgGは(選別エンドゾームで)IgG/Fc受容体複合体を形成した後、大部分ブリフェルディンの影響を受けずにトランスサイトーシス経路へ送られた。4.これらの結果は、IgG・Fc受容体複合体は選別エンドゾームのおだやかな内部酸性環境でプロテアーゼから保護され、無傷のIgGが胎児側にトランスサイトーシスされるとの予想を支持する。rab4,rab5Aはこの選別エンドゾーム(およびリサイクリングエンドゾームの一部)と輸送小胞の融合を制御する分子スイッチとして機能していること、IgG・Fc受容体複合体がクラスリンやCOPなど小胞コート蛋白の関与を受けずに選別エンドゾームから離出する新たなメカニズムがあることを示唆する。
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