研究概要 |
若年期(3月齡ラット)の神経再生におけるシュワン細胞(Schwann cells,SC)-軸索(axon)間の相互作用が老年期(24月齡ラット)にいかなる変化を示すかについて解析した。坐骨神経挫滅後、再神経支配の過程にある骨格筋の凍結切片を作成した。SC、axon,細胞外物質または接着分子(NCAM,laminin,tenascin),および髄鞘を標識するmonoclonal抗体とpolyclolnal抗体を蛍光免疫組織化学的に組み合わせて二重染色を行ない、所見を共焦点レーザー顕微鏡により解析した。これらの抗体とα-bungarotoxin(BT,NMJのacetylcholine receptorを標識する)とも組み合わせた。1)SC-BT,axon-BT.若年期には多数のaxonやSCはNMJの部位で交錯し、いわゆるtangle(disorganized and disordered threads)を形成する。また、terminal sproutingにより二-三のNMJを連結するループが形成される。老年期ではtangleの形状が不整であったり、またループを構成するSCやaxonのサイズ、形状、成熟度に高度の不均一性が認められた。2)SC-BT.老年期には多数の変性SCが神経再生の早期から出現した。3)axon-SC.若年期には一条のSC sheath bridgeを複数のaxonが通り、再生が進むにつれてNMJにterminal SCが形成される。老年期では、各々のNMJにおけるacetylcholine receptor、SC、axonの三者間の成熟度は不均一性を示した。4)NCAM,tenascin,laminin,MBPはSCの内部または周縁に存在するものと考えられるが、SCの変性に相応する分布異常がみられた。これらの結果から、老年期に特有の神経再生の遅れには(1)SCの変性により、軸索誘導、神経線維束形成、terminal SCの形成などの機構が障害される、(2)NMJを再構築する前シナプスと後シナプス要素間における成熟度の不均一性が関与するものと考えられる。
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