平成8年度の検討により、成長軟骨血管侵入部には積極的に軟骨基質を吸収する細胞が存在市内ことが明かとなった。そこで本年度は、侵入血管の基本的形態を観察する事で血管侵入の機序の解明を試みた。エポン準超薄連続切片再構築法により、侵入血管がループ血管であり、先進部には血管内皮細胞以外に長い細胞突起を持った神経細胞様の形態を示す細胞の存在が明らかになった。先進部より骨髄側の血管周囲にはadventitial reticular cellと呼べる細胞があり、この細胞に接するように多核の細胞が散見された。 血管侵入先進部より骨髄側の血管周囲腔の多核細胞は、破骨細胞のruffled border membraneの指標酵素であるalkaline p-nitrophenylphosphatase活性が陽性であった。この酵素は、H-pump ATPaseの部分活性と考えられているので、この多核細胞を移動型破軟骨細胞と同定した。電子顕微鏡多数例観察から移動型破軟骨細胞はadventitial reticular cellと必ず接しており、また、移動型破軟骨細胞出現部位より骨髄側に、初めて軟骨基質に接する破軟骨細胞が観察された。軟骨基質にアッタクしている破軟骨細胞は、蛋白分解酵素活性やライソソーム酵素活性が陽性で積極的に軟骨基質を吸収している。 以上から、成長軟骨血管侵入部には破軟骨細胞形成部位が存在し、ここで作られた破軟骨細胞がadventitial reticular cellに誘導され、より先進部方向に細胞を移動させる機序があることが判明した。
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