BALB/cA系雄マウスにメトトレキサート(Mtx;1mg/回/マウス)を隔日投与すると、3〜10回投与以降、体重が減少し、75〜65%で死亡した。連日投与では、2〜5回以降体重が減少した。体重が80%を割った時点で投与を中止すると、2〜4日間で体重が70〜65%にまで低下し、一部は死に至るが、生存した個体は、4〜5日で元の体重にまで回復した。 絨毛の退縮はMtx投与回数・体重の減少とに関連し、体重が70%を割る頃にはほとんど退縮した。陰窩は内腔が拡大し、扁平な細胞や大きな濃染する核を有する細胞で裏打ちされていた。退縮した絨毛基部の上皮細胞は多数の微細な空胞を有しており、先端部では空胞が大きくなった。退縮過程の絨毛ではテネイシン(Tn)の染色性は低下し、逆に陰窩の基底膜やその周囲の結合組織に出現した。退縮した絨毛ではTnが消失し、大半の陰窩が豊富なTnで取り囲まれていた。回復期の絨毛では、先端部にまでTnが見られた。ラミニンの分布や染色性に大きな変化は見られなかった。絨毛内を先端部に向かって直線状に走る細動脈は、退縮した絨毛では螺旋状に屈曲していた。上皮下の毛細血管は間隔が短くなって密度が増加していた。 これらのことより、Mtxによって上皮の増殖が阻害されると、絨毛は容易に退縮し、それに伴ってTnは減少するが、陰窩は縮小せず、引き延ばされて扁平化した細胞や異形の上皮細胞によって裏打ちされ、その周囲にはTnが誘導されてくる。絨毛内の細動脈は絨毛が退縮する際には、短縮するのではなく縦軸方向に圧縮され、螺旋状に屈曲した走行をするようになる。毛細血管網は減少するものの密度は増加することが明らかとなった。 以上の結果をふまえて、現在TnノックアウトマウスにおけるMtxの影響を検討中である。
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