視覚に関係した部位である小脳室頂核(Ft)尾側半部と上丘(SC)間の線維連絡のあることは既に報告されている。以前に、Ft-Sg投射神経細胞とFt-SC投射神経細胞がFt尾側半部の同一部位に共存しており、同側のSgとSCの両者へ、また両側のSgに投射する二重標識神経細胞の存在することを報告した。しかし、Ft神経細胞が側副枝を出して、両側のSCに投射しているか否か、いまだ不明である。本研究は、両側SCに異なる蛍光色素を注入し、逆行性軸索輸送により、Ft-SC神経細胞の投射様式を検索した。実験には成熟ネコ7匹を用い、ケタミンおよびネンブタール麻酔下で、脳定位固定装置に固定し、先ず左側のSCにfast blue(FB)を0.5μl圧注入し、その3日後に、再麻酔し、右側のSCにnuclear yellow(NY)を0.5μl圧注入した。その後、このネコを1日間生存させ、ネンブタール深麻酔下で、10%ホルマリン溶液にて灌流固定した。その後、脳を取り出して小脳および脳幹を分離し、これについて厚さ50μmの前頭断連続凍結切片を作製し、蛍光顕微鏡を用いて両側SCへ線維を投射する神経細胞をFt内で追究した。その結果、逆行性に標識された神経細胞が両側のFt尾側半部に観察された。fastblueで標識されたFt-SC投射神経細胞はその細胞核を除き、細胞質および樹状突起が青色に標識されていた。また、nuclear yellowで標識されたFt-SC投射神経細胞はその細胞の核のみが黄緑色に標識されていた。それぞれの蛍光色素により標識される標識神経細胞はFtの尾側半部に散在して観察された。その中で、両者の蛍光色素により同時に逆行性に標識される二重標識神経細胞が観察された。よって、以前の実験と本実験により、一つのFt神経細胞がSgとSCに、また両側Sgに側副枝を出して投射しているのと同様、両側のSCにも側副枝を出して同一情報を伝達している事が示唆された。
|