研究概要 |
本研究はネコの膝状体外視覚系に関係する神経回路の全貌を解明する事を目的としている。この神経回路中、視床膝上核(Sg)、上丘(SC)、及び小脳室頂核(Ft)の相互線維連絡を検索するため、トレーサーとしてWGA-HRPおよび蛍光色素を用い形態学的(光顕・電顕)に研究を進めた。1.WGA-HRPを用いた逆行性実験により、(1)膝上核へ投射するSC-Sg投射神経細胞は上丘のII、VI、III、V、IV層の順に多数存在し、形態学的に星状・垂直・顆粒・三角・水平細胞の5タイプに分類された。また、SC-Sg投射神経細胞数の約2.0%が反対側の膝上核に投射していた。(2)室頂核神経細胞が両側の膝上核へ投射する事を確認し、そのFt-Sg投射神経細胞を形態学的に星状・三角・紡錘・顆粒細胞の4タイプに分類した。2.WGA-HRPを用いた順行性実験により、(1)上丘神経細胞から膝上核への投射終末は大型の終末で、膝上核神経細胞の樹状突起と非対称性のシナプスを形成していた。(2)室頂核神経細胞から膝上核への投射終末は大型の終末で、しばしばシナプス複合体を形成していた。3.蛍光色素(fast blue,nuclear yellow)を用いた二重蛍光標識法により、(1)Ft-Sg投射神経細胞数の約20%の神経細胞が、またFt-SC投射神経細胞数の約10%の神経細胞が二重に標識された。その結果、一つのFt投射神経細胞が側副枝を出して、同側の膝上核と上丘に投射線維を出すことが明らかとなった。(2)SC-Sg投射神経細胞の大多数は同側性に投射しており、この中で主に上丘吻側部に観察される神経細胞は反対側の膝上核にも投射していた。更に、反対側の膝上核に投射するSC-Sg投射神経細胞数の約8.5%が側副枝を出して、両側の膝上核に投射線維を送っている事が明らかとなった。以上によって、視床膝上核(Sg)、上丘(SC)、及び小脳室頂核(Ft)間の線維投射様式はほぼ解明された。
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