研究概要 |
脳軟膜の生理的役割の全貌を明らかにする一環として、軟膜細胞により産生される蛋白因子(apolipoprotein E,beta-trace protein etc.)が生理的変化に対してどのように変動するかを検討した。 1、下垂体摘出により誘導される視床下部vasopressin神経の脱落に伴い、軟膜産生蛋白(apolipoprotein E,transferrin,cystain C etc,)の動態を免疫染色法で検討した。得られた成果は;脱落してゆく神経の細胞体にcystatin C,apolipoprotein Eの集積が認められるが、transferrinは変動しなかった。この事実と昨年度得られた実験成果とを考え合わせると、虚血による細胞死と標的削除による細胞死とで作動する老廃物除去システムとに違いがあることが示唆された。 2、ラット髄液中のbeta-trace protein(prostagalandin-D-synthase)を測定する系を確立し、生後発達に伴う変化や血液中への各種ホルモン投与の影響を解析した。その結果;髄液中のレベルは生後1週目に最高値を示し、老齢ラットでも成人と変わらない。レチノイン酸の末梢投与でbeta-trace proteinのレベルが低下する。事が明らかとなった。 以上の実験成績は髄膜が各種の生理活性蛋白因子を産生し、脳の発達や神経細胞死の過程で極めて積極的な役割を果たしている可能性を示唆している。現在、髄膜による各種の蛋白産生能がどのように調節されるかを細胞培養系を用いて検討中である。
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