研究課題/領域番号 |
08670046
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
寺川 進 浜松医科大学, 光量子医学研究センター, 文部教官教授 (50014246)
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研究分担者 |
櫻井 孝司 浜松医科大学, 光量子医学研究センター, 文部教官助手 (50283362)
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キーワード | β細胞 / インスリン / エキソサイトーシス / 活性酸素 / MCLA / ビタミンE / ラジカル |
研究概要 |
本研究の目的は、各種ラジカルの膵β細胞におけるインスリン放出への関与を明らかにすることである。この目標のために、一酸化窒素、活性酸素ラジカル、ビタミンEのβ細胞の顆粒に対する効果を調べた。この過程で、強力なラジカル消去剤を作るのに成功した。また、グルコース刺激をしたときのラジカルの発生を2次元イメージとして捉える仕事を昨年に続けておこなった。ランゲルハンス島を含む膵組織切片をMCLAを含む溶液中に置き、その発光をフォトンカウンティングカメラによって捉えた。グルコース刺激をすると、組織全体の発光量が増大し、その増加量はランゲルハンス島を中心とした領域で最も大きかった。この点は昨年の結果に一致し、グルコース濃度の上昇は膵組織全体の活性酸素ラジカルの発生に結びつくことが証明された。しかし、その発生はランゲルハンス島に限局せず外分泌組織の領域にも広がることも分かった。活性酵素ラジカルはβ細胞の脱顆粒を引き起こす力があるが、血中グルコースの作用はβ細胞のみに限局せず、外分泌組織中の血管内皮等に働いて、活性酸素ラジカルを発生させ、それによってインスリン放出が促進される経路も考えられることが分かった。αトコフェロールはβ細胞の脱顆粒を誘発した。この作用は溶液中に加えたウシ血清アルブミン(BSA)の種類によって大きく変化した。A社のBSAはこの作用を完全に阻害したがB社のそれは阻害効果がなかった。ヒトの血液中には通常ビタミンEは50μMほども存在するが、この結果は、アルブミンの分子状態によってビタミンEがラジカル消去剤からラジカルそのものに転化して、β細胞を脱顆粒し破壊する可能性が示唆された。 今後の研究展開として、活性酸素ラジカルを投与したときにインスリン放出があることを化学的に証明し、上記ラジカル消去剤がグルコースの作用に対して抑制的に働くことを確認していく必要がある。
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