研究概要 |
平成8年度)平滑筋細胞膜に存在するL型Caチャネル(主にモルモット膀胱平滑筋を用いて実験)は、高脱分極を与えると電位依存性に第二の開口状態へと遷移する。Caチャネルがこの開口状態にあると、不活性化を受けず、チャネルが長期に開口する。また、再分極時には、非常にゆっくりと脱活性化する。同様の現象がH-7やATPγS存在下でも観察されたので、このCaチャネルの第二の開口状態への遷移は、電位依存性燐酸化というような、化学反応そのものによって引き起こされるのではないと考えられた。 平成9年度)平滑筋型Caチャネルのα1-subunit(α 1Cb)のみが発現したCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞に、Cell-attached patch clamp法を適応して、単一Caチャネル電流の開口様式を解析した。電極にはCa-agonistであるBay K 8644(2μM)が常時含まれていた。また、50or100mM Baもcharge carrierとして含まれていた。4-5秒の大きな条件付け脱分極パルス(+80to+100mM)を与えた後、テストパルス(+40mV,5-15msec)を与えた方が、単にテストパルスを与えた場合より、有為に再分極時のCaチャネル開口時間が延長していた。これは、平滑筋型Caチャネルのα1-subunitのみでも、電位依存性に複数の開口状態をとることを示唆した。このα1-subunitと骨格筋型Caチャネルのβ-subunit(β1a)を同時に発現した細胞を用いた場合には、上述のような再分極時の長期開口が見られる頻度は減少した。しかし、条件付け高脱分極の期間を0.1-0.2msecに短くすると、また再分極時の長期開口が見られる頻度は回復したので、これはβ1aによって不活性化速度が上昇したためであると、考察された。
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