研究概要 |
ウサギの洞房結節細胞を単離し,遅延整流Kチャネル(HERG由来Kチャネル)に対する細胞内外の2価イオンの効果を単一チャネル電流記録を行うことにより検討した.正常の細胞外Caイオン存在下(1.8mM)では,強い脱分極から-50mVへ再分極した臍に緩やかに減衰するチャネル活動が記録できる.電極内のCaイオンを取り除くと,平均電流で観察したチャネルの脱活性化は著しく抑制され,逆にCaイオン濃度を5.4mMへ増加すると脱活性化は促進された.単一チャネル振幅,平均の開閉時間,再分極直後のチャネル開口までの時間(first latency)はCa濃度に影響をうけず,バースト時間(チャネルが開口してから完全に脱活性化してしまうまでの時間)のみがCaイオンにより著しく延長した.無Ca液中では確かにチャネルの減衰過程は著しく延長するが,強い過分極側では依然としてチャネルの脱活性化が観察される.このことは脱活性化過程がCaイオンによるブロックによって生じているのではなく,むしろCaがチャネルの脱活性化過程を促進していると考えられる. inside-outモードで細胞内液のCaイオン,Mgイオンの効果を検討した.細胞内側のCaイオン,Mgイオンを完全に取り去った状態でも外向きおよび内向きいずれのチャネル活動にも有意な変化は認められなかった.さらに,cell-freeの状態で30分以上人工液に曝しても外向きチャネル活動に変化はなく,遅延整流Kチャネルの内向き整流性はこれら2価イオンや細胞内ポリアミンによるブロックではなくチャネル自身のゲート機構によるものと結論した.
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