研究概要 |
平成7年度から9年度にわたる本研究の成果は以下のように要約される。 1.強縮中のカエル単一骨格筋線維を中程度の速度(1length/s以下)で約30%伸張するさい、伸張の途中で伸張速度を40-50%以上急激に低下させると、それ迄上昇していた張力は下降に転ずる。 2.この現象はCa^<2+>により活性化したグリセリン抽出単一ウサギ骨格筋線維でもみとめられ、実験液中のPiやADP濃度変化により影響されない 3.上記の実験に使用する伸張を速度V_1の初期伸張と速度V_2(<V_1)の後期伸張に分割し、それぞれの伸張を単独に与えたさいの張力応答(TR1とTR2)を記録し、伸張速度をV_1からV_2に低下したさいの張力応答と比較した結果、伸張速減少後、TR1とTR2は代数和的に加算されることがわかった。 4.この性質は、伸張中の筋線維には二種の異なるクロスブリッジのグループが存在し、これらは力学的に並列で、それぞれの発生する張力は代数和として加算されることを強く示唆する。 5.この考えの当否を検討するため、筑波の放射線光実験施設の張力X線源を用いて強縮中のカエル骨格筋伸張時の赤道1,1反射強度変化を記録した結果、中程度の伸張(速度V_2)を単独に与えた場合には伸張中1,1反射強度が減少を続けるのに対し、初期伸張(速度V_1>V_2)を先行させた場合には伸張中1,1反射強度が変化しないことを見出した。この減少は上記4の仮説でよく説明しうる。
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