研究概要 |
中脳中心灰白質は多彩な防衛反応を統合する最高位中枢であることが確立しているが,当課題研究において中心灰白質は防衛反応の一表現として皮質血流量も増加させることをラットについて発見し報告した.次にこの皮質循環調節機構の詳細を調べた結果,マイネルト核を起始とするコリン作動性皮質投射-皮質ムスカリン受容体系,および何らかの興奮性アミノ酸作動性皮質機構-皮質NMDA受容体系が決定的に関与すること,その2つの神経機構の働きによって活性化した皮質エネルギー代謝および皮質一酸化窒素(以下NO)産生系が協調して働き,皮質血流量を増加させることを明らかにし報告した. ここまでの研究ではNOの関与をNO産生酵素を阻害剤で遮断する方法で評価したが,本年度は皮質におけるNO産生率をフィックの原理に基づいて直接測定し評価することにした.NO産生率(NOμM/min per 100 g cortical tissue)は「全血液中のNO濃度の皮質動静脈較差」と「皮質血流量」との積で計算できる.現在,NOアナライザーを用いて全血液に含まれているNO濃度の測定を重ねているが,いまのところ安定した測定結果が得られず,NO産生率として合理的な値は算出できていない.そこでアッセイ系の改良を下記のように試みている:(1)ラットを絶食とし,ハイドレーションおよび血液の酸塩基平行を正常に保つことによって,もともとより高度なNO濃度のバイアス値を低く保ち,皮質動静脈濃度較差をより大きな比率で測定する;(2)外部パ-ジベッセル(測定試料を導入しNOを遊離する瓶)内をより高温に保ち,NO遊離効率を高める;(3)パ-ジベッセル加温装置を可及的に安定化させる.
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