研究概要 |
ラットの加齢による概日リズム変化について行動リズム、睡眠リズム、SCN のFos様蛋白陽性細胞の免疫組織化学的検討を行い、尿崩症ラットやZitter rat(ZI)などの突然変異ラット及びpropylthiouracil処置による甲状腺機能低下ラット(TX)など疾患モデル動物と比較し加齢のモデル動物としての可能性につき考察した。行動リズムについて、恒暗時のリズム、光パルスもしくは明暗位相の強制的変化に対する位相変化について検討した。その結果、SD(Sprague Dawley),尿崩症ラット(DI)、ZI、TXすべてにおいて周期の短縮・振幅の減少、光による位相変化の遅延、明暗位相変化に対する再同調期間の延長などが観察された。ZIではこの加齢変化が6-9ヵ月齢より見られ、9-10ヵ月齢のZIは24ヵ月齢以上のSDラットに相当することを確認した。一方DI,TXラットは個体数を増加したところ、以前見られた加齢による変化は無く、SDラットと有意差は見られなかった。明暗環境下SCNのFos様蛋白陽性細胞の発現はSCN全体に弥漫性に出現し、明時に多く暗時に少ないが、加齢に伴い陽性細胞の数の減少と、明暗による細胞数の差が無くなり25ヶ月齢SDラットでは完全に明暗の差が失われた。この変化のDI,TX,SDラット間の差は認められなかったが、ZIでは10ヵ月齢で既に24ヵ月齢以上のSDラットの変化と同等であった。一方2-3日間の恒暗条件下の2-3時間の光パルス刺激によるSCNのFos様蛋白発現はSCN腹外側部に局在的に出現し、主観的暗時刺激の方が明時刺激より有意に多く出現した。この変化に加齢による有意な差はすべての実験群で、認められなかった。以上の結果及び計量解剖学的な加齢による変化からもZIはリズムの加齢変化の探索に適したモデルであることが示された。また加齢によるリズム変化はSCN内のオッシレータ間の脱同調がその一因であると考え、細胞レベルの研究もわれわれの確立した細胞培養系を用いて検討し、種々の生理活性物質などがSCN内細胞応答に関与していることを窺わせる成果を得ている。
|