慢性ストレス曝露は、一般的に鬱病の病態モデル作製の1手段であり、また多くの鬱病患者では睡眠障害を含めた生体リズム障害を認めることが知られており、慢性ストレス曝露と生体リズム障害との関連性が示唆されている。本研究の目的は、慢性ストレス曝露による視交叉上核の持続性もしくは不可逆的な機能障害の可能性を検討し、正常老化、鬱病、老年期痴呆患者に認められる生体リズム障害を病態生理学的に説明することである。 今年度は、慢性ストレス曝露ラット(3カ月のFoot shock stress(FS)群、Emotional stress(ES)群、Immobilization stress(IS)群)について、体温・自発行動量・摂食量・飲水量を測定した。いずれも慢性ストレス曝露後2カ月以上の回復期間をおいて測定した。 1)体重および血中グルココルチコイドレベル:いずれの群の慢性ストレスラットとも対照群に比し有意に体重増加が抑制され、なかでもIS群ラットでは顕著であった。血中グルココルチコイドレベルはいずれの群とも、ストレス負荷前に比し有意に上昇し、次第に低下するものの特にES群・IS群では、ストレス負荷後1カ月でも日内リズムは不明瞭化したままであった。 2)自発行動量について:いずれの群の慢性ストレス曝露ラットとも、24時間のリズムは明確であり、FS群・ES群では行動量も対照群と同程度であったのに対し、IS群では一部明期に行動量が増加していた。 3)体温について:いずれの群の慢性ストレス曝露ラットとも、24時間のリズムは明確であり、FS群・IS群では体温も対照群と同レベルであったのに対し、ES群では一部明期を除き対照群に比し有意に上昇していた。 4)摂食量・飲水量について:いずれの群の慢性ストレス曝露ラットとも、24時間のリズムは明確であり対照群との差は認められなかった。
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