研究概要 |
糖尿病病体モデルラットの心筋ではβ受容体を介する陽性変力作用が減弱していることが知られているが、私達はβ受容体刺激からアデニレートシクラーゼ活性化にいたる情報伝達が、むしろ対照正常ラットより亢進していることを認めた。そこで、受容体(R)と標的蛋白であるアデニレートシクラーゼ(AC)を連関させるG蛋白の変化を検討したところ、ADPリボシル化反応ではGstoGi両者の増加、イムノブロッティング法ではGsは不変で、Giは減少と測定法で矛盾する結果を得た。いずれの測定法が、糖尿病病態心におけるR-E連関の変化を惹起するG蛋白の変動より正確に反映しているか検討をおこなった。糖尿病病態心で認められた事実は次の通りである。 1.糖尿病病態ラット心筋では、受容体刺激、GppNHp,NaF刺激によるAC活性上昇は正常ラット心より有意に大きかった。 2.糖尿病病態心筋ではフォルスコリンによるAC活性上昇よりも有意に大きかった。 3.mRNAレベルではGs蛋白mRNA発現は不変、Gi蛋白RNA発現は減少はしていた。 そこで、人為的にGi蛋白機能阻害するPTX処置ウサギ心筋膜を用いて同様の検討を行ったところ、次の成績を得た。 1.PTX処置動物では、受容体刺激およびGppNHpによる刺激によるAC活性上昇は無処理動物のそれより大きかった。 2.しかしNaFおよびフォルスコリン刺激によるAC活性上昇には有意な差を認めなかった。PTX処理によるGiαサブユニットのADP-リボシル化がNaFに対するGiの親和性を変えず、また、GiαniよるAC抑制に種差があるとも考えられる。 矛盾点や検討を要する項目はあるが、糖尿病病態心筋でみられたR-E連関の変容は、mRNA測定およびイムノブロッティング法で認められたGi蛋白減少によるGiの緊張性抑制の減弱であると推論され、したがってG蛋白の機能変化の検討にはイムノブロティング法が的確な手法と言える。
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