研究概要 |
心筋Na^+活性化K^+(KX_<Na>)チャネルは細胞内側のNa^+濃度が増加した時活性化し大きな電流を流すK^+チャネルであり、digitalis中毒あるいは心筋虚血等の病態時のみならず、生理的に脱分極興奮を繰り返した際においても活性化する可能性が指摘されている。しかしながら、心筋細胞のK_<Na>チャネルが受容体制御を受けるか否かは検討されていない。本研究ではパッチクランプ法を用い、モルモット心室筋細胞で活性化したNa^+活性化K^+電流(I_<K.Na>)に対するエンドセリン(ET)受容体およびβ受容体刺激の影響について検討した。全細胞電流記録法で細胞内にNa^+を50mM負荷すると共に、細胞外には10μMouabainを与えI_<K.Na>を活性化させた。このI_<K.Na>に対してET-1(10nM)は抑制作用を示したもののET-3(30nM)は抑制作用を示さなかった。また、ET-1のI_<K.Na>抑制作用はET^A受容体拮抗薬BQ-485の前処置により消失した。ET-1のI_<K.Na>抑制作用はprotein kinaseCの抑制薬やイノシトール三リン酸の細胞内負荷によって影響を受けなかった。Isoproterenol(100nM)はI_<K.Na>を52±6%抑制したが、その抑制作用はβ_1受容体遮断薬であるatenolol(10μM)で拮抗され、β_2受容体遮断薬のICI118,551(100nM)で拮抗されなかった。また、forskolin(10μM)でisoproterenolと同様のI_<K.Na>抑制作用が発現し、isoproterenolによるI_<K.Na>抑制作用はprotein kinase inibitor peptide の細胞内負荷によって消失した。この事はβ_1受容体を介するK_<Na>チャネルの抑制にはcAMP-protein kinaseA系が関与する事を示唆するものである。この様に、ET_A受容体刺激およびβ_1受容体刺激によってK_<Na>チャネルは抑制され、種々の生理的状態および病態において活動電位幅が修飾される可能性が示唆された。
|