研究課題/領域番号 |
08670107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
岡村 富夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (70152337)
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研究分担者 |
安屋敷 和秀 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10167968)
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キーワード | 一酸化窒素(NO) / NO作動性神経 / 血管内皮由来弛緩因子(EDRF) / カルシウム拮抗薬 / サイクリックGMP / 血管緊張性調節 / 血管平滑筋 / 脳動脈 |
研究概要 |
血管平滑筋の緊張性は内膜側からは内皮細胞により、外膜側からは支配神経により調節されている。近年、内皮由来血管弛緩因子(EDRF)の本体が一酸化窒素(NO)であることが明らかにされた。一方、我々は血管拡張神経の存在を薬理学的に実証し、その伝達物質がNOである可能性を見いだした。内皮細胞および神経に存在する構成型NO合成酵素活性がカルシウム依存性であり、それらの細胞へのカルシウム流入はEDRFおよび神経伝達物質の遊離を促す。そこで、摘出イヌ脳動脈標本を用い、これら内因性NOを介する血管弛緩反応および平滑筋直接収縮作用に対する種々のカルシウム拮抗薬の作用を検討し、以下の成績を得た。(1)セロトニンおよびプロスタグランジンによる平滑筋直接収縮作用は、カドミウム(非選択的カルシウム拮抗薬)およびニカルジピン(選択的L型カルシウムチャネル拮抗薬)で抑制されるのに対し、ω-コノトキシンGVIA(選択的N型カルシウムチャネル拮抗薬)やテトラメスリン(選択的T型カルシウムチャネル拮抗薬)では抑制されなった。(2)EDRF遊離物質であるサブスタンスPによる弛緩および組織中サイクリックGMP増加作用は、カドミウムでは抑制されたが、他のカルシウム拮抗薬では抑制されなかった。(3)経壁電気刺激による弛緩作用は、テトロドトキシンおよびNO合成酵素阻害薬により消失するが、カドミウムおよびω-コノトキシン処置でも有意に抑制された。他方、ニカルジピンでは抑制されなかった。したがって、血管内皮細胞、平滑筋細胞および神経終末に主として存在するカルシウムチャネルがそれぞれ異なり、細胞内カルシウム流入により生じる多様な細胞応答が、細胞膜レベルで制御されていると考えられる。さらにNOは、平滑筋の両側から自発的に遊離され、血管を拡張性に調節していると考えられるが、異なったカルシウム流入機序による独自の産生調節機構の存在が示唆される。
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