プロスタノイド受容体はロドプシン型受容体ファミリーに属する7回膜貫通型受容体である。その中でプロスタノイド受容体に特徴的な構造がすべてのプロスタノイド受容体に存在している。したがって、リガンドのこれらの受容体への結合においては、この共通構造がプロスタノイドの基本骨格を認識し、非共通部分が各プロスタノイドに対する結合特異性を決定すると考えられる。プロスタノイド受容体ファミリー中の異なる2種の受容体を組み合わせたキメラ受容体を作成し、リガンド結合親和性を比較することにより、リガンドの特異的結合を決定するリガンド構造を認識する受容体領域の同定を行った。 [方法] マウスプロスタノイド受容体の中では比較的相同性が高く(アミノ酸配列で約40%の相同性)、セカンドメッセンジャーとして共にアデニル酸シクラーゼを活性化するプロスタグランジン(PG)D_2受容体(mDP)とPGI_2受容体(mIP)を用い、N末端側がmDPの対応する部位で置き換えられたmIP、および、N末端側がmIPで置き換えられたmDP、という構造のキメラ受容体cDNAを10種類作成した。これらをCOS細胞に発現させ、IPアゴニストのiloprost、carbacycline、及びPGD_2、PGE_1、PGE_2、PGF_2αのキメラ受容体への結合親和性を検討した。 [結果および考察] 作成したキメラ受容体は、mIPまたはmDPと異なるリガンド結合の特徴を示した。プロスタノイド分子の五員環構造と側鎖の二重結合の有無がキメラ受容体によるリガンド認識に大きく影響していた。これらの解析から、プロスタノイド受容体の第6、7膜貫通領域がプロスタノイド側鎖の二重結合の有無によるリガンド構造の識別に寄与が大きく、第3膜貫通領域はPGリガンドの五員環構造の違いを認識することが明らかとなった。
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