マウスColon 26株化細胞を10^6cells/0.2ml、BALB/cマウスの背部皮下に移殖し、担癌動物を作製した。担癌マウスと対照の偽手術マウスの体重と腫瘍塊の大きさを経時的に測定したところ、担癌マウスでは、移殖後14日以降、有意の体重減少が見られ悪液質を誘導することができた。移殖後7日、14日、21日、24日目にマウスのひ臓、肺、肝臓、腎臓を採取し、一部はヒスタミン測定用、一部はヒスチヂン脱炭酸酵素(HDC)活性測定用とした。担癌マウスの各臓器のヒスタミン含量には観察期間中有意の変化は認められなかったが、HDC活性は14日目以降ひ臓、肺、肝臓で有意の上昇を示し、24日目には対照動物の約1.5-3倍になった。腎臓では有意の変化は認められなかった。次にColon 26株化細胞を親株としてサブクローニングされた悪液質誘導株Clone-20と悪液質非誘導株Clone-5の2つの株化細胞について同様の実験を行い、HDCの誘導と悪液質の発生との関係について検討した。ヒスタミン含量は、正常マウス、悪液質誘導担癌マウス(C-20)、悪液質非誘導担癌マウス(C-5)間に調べたいずれの臓器においても差は認められなかった。一方HDC活性は、C-20で移殖後7日目で肺とひ臓において有意の上昇を認め、その上昇は14日めには正常マウスの4-6倍にも達した。C-5群のHDC活性は、C-20群と正常群の中間的値であった。以上の結果から、担癌モデルマウスにおいては、強いHDC活性の誘導が起こることが明らかとなり、担癌状態において肺あるいはひ臓において産生されるヒスタミンが炎症反応、免疫応答を調節する可能性が強く示唆された。
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