ラットの胃にグルタミン酸作動性神経の存在することが免疫組織化学的研究から示唆されている。さらに機能との関連でも、グルタミン酸はin vivoおよびin vitroにおいて胃酸分泌を抑制するとされる。そこで、胃でのグルタミン酸の生理的役割を調べるため、ラット摘出血管潅流胃標本からの内因性グルタミン酸遊離について検討した。試料中のグルタミン酸は、生物発光法により測定した。 高濃度KCl刺激(30-75mM)は用量に依存したグルタミン酸遊離を来した。このKCl刺激によるグルタミン酸遊離は外液からのカルシウム除去により消失した。迷走神経の電気刺激もまたグルタミン酸遊離を来した。この迷走神経刺激によるグルタミン酸遊離はカルシウム除去およびテトロドトキシン適用のいずれの処置でも消失した。グルタミン酸を含めて標本から遊離されるアミノ酸のうち、アミノ酸分析器により検出可能であった他のアミノ酸はタウリンを除き、いずれもKCl刺激あるいは迷走神経刺激によっても有意な変化を示さなかった。 このグルタミン酸遊離に、いずれの型の電位依存性カルシウムチャネルが関与しているかについて種々のカルシウムチャネル拮抗薬を用いて検討した。KCl刺激により惹起したグルタミン酸遊離は、カルシウムチャネルの非特異的遮断薬であるカドミウム(10^<-4>M)により著しく減少した。このKCl適用によるグルタミン酸遊離は、isradipine(L型遮断薬)(10^<-5>M)、及びω-AgatoxinIVA(10^<-7>M)により有意に抑制された。一方、flunarizine(T型遮断薬)(3×10^<-5>M)及びω-ConotoxinGVIA(N型遮断薬)(10^<-7>M)では変化しなかった。これらのことから、グルタミン酸は中枢神経のみならず胃においても神経伝達物質として働くこと、その遊離にはL型及びP型の電位依存性カルシウムチャネルの関与が推測される。
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