研究概要 |
種々のストレスがリウマチ、糖尿病など自己免疫疾患の発症と経過に影響することからも明かなように、神経-内分泌系と免疫系間には密接な相互作用がみられる。私たちは血液ノルアドレナリン(NA)およびアドレナリン(Ad)値ならびに大内臓神経の電気活動を指標に交感神経-副腎髄質系の中枢性統御機構を脳内神経伝達物質との関連で検討してきた。そこで今回、血液NAおよびAd値を指標に、免疫活性物質インターロイキン1β(IL-1β)の中枢作用と、その機序をウレタン麻酔ラットを用いて検討した。 {成績}1)IL-1βの脳室内投与は用量(50,100,200ng/rat)に応じて血液NA値の増加を惹起した。一方、Ad値は高用量でも変化しなかった。2)この免疫活性物質によるNAの選択的な増加は次のいずれの前処置でも消失した。即ち、(A)6-hydroxydopamineを用いての化学的交感神経切除、(B)プロスタグランジン(PG)の生合成酵素阻害薬indomethacinの前処置、(C)一酸化窒素(NO)の生合成酵素阻害薬L-NG-nitroarginineの脳室内前処置、ならびに(D)NOスカヴェンジャーoxyhemoglobinの脳室内前処置である。3)そこで次にNOの作用を検討した。代表的なNOドナーである3-morpholino-sydnomineの脳室内投与は用量依存的(100-500μg/rat)にNAとAd値の両者を増加した。更に、このNOドナーの作用はindomethacinの前処置で消失した。IL-1βと違って何故NOがNA値のみならずAd値をも増加するのか、又、その機序は?、などについては更に検討中である。 {結論}IL-1βは中枢性に交感神経系を選択的に賦活する。更に、このIL-1βの作用にはNOと、これを介して合成された脳内PGが関与するのであろう。
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