種々のストレスがリウマチ、糖尿病などの自己免疫患者の発症と経過に影響することからも明らかなように、神経-内分泌系と免疫系間には密接な相互作用がみられる。そこで私たちは免疫情報の伝達に関与するサイトカインの一つ、インターロイキン-1β(IL-1β)が交感神経-副腎髄質系の中枢調節にどのように影響するかを検討した。 具体的には、ウレタン麻酔ラットの血液カテコラミン値と血圧とを指標に実験を行った。得られた成績を纏めると、1)IL-1βの脳室内投与は一酸化窒素(NO)の生成と、それに続くプロスタグランジン(PG)の生成とを介して血液アドレナリン(Ad)値には無影響にノルアドレナリン(NA)値のみを増加した。即ち、交感神経系を選択的に賦活した。2)NOドナー3-morpholinosydnominine(SIN-1)の脳室内投与は血液AdとNA値を増加した。しかも、前者の増加は後者のそれより著しく大きかった。3)このSIN-1によるAdおよびNA値の増加はcyclooxygenase阻害薬indomethacin、ならびにNO消去薬carboxy-PTIOいずれの前処置でも消失したが、スーパーオキシドアニオンの消去薬superoxide dismutaseでは変化しなかった。4)SIN-1によるAd値の増加はトロンボキセンA2(TXA2)の合成阻害薬(furegrelateとcarboxy-heptyl imidazole)ならびにTXA2受容体遮断薬({+}S-145とSQ29548)いずれの脳室内前処置でも消失した。 {まとめ}IL-1βはNOとPGの生成を介して中枢性に交感神経を賦活する。更にNOは脳内でTXA2の生成を介して副腎髄質機能をも著しく高める。IL-1βが副腎髄質機能に無影響なのは、この機能を賦活する脳内部位にIL-1βの受容体が存在しないことを示唆する。
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