研究概要 |
本研究の最も特徴的な点は、(1)成熟マウス心筋において、他の動物種とは事なり、α受容体刺激が陰性変力作用を示すこと、(2)新生児心筋では陽性変力作用を示すが、生後発育に伴って反応の逆転が起こるということである。他の動物種では、すべてα-受容体刺激は陽性変力作用を示すという観点からみて、特に(1)のメカニズムに興味が持たれるので、本年度は特にこの点に研究の重点をおいた。本年度得られた主な実験結果は次のように要約できる。 1)α受容体刺激による陰性変力作用は、細胞外Ca^<2+>濃度の上昇により抑制される。 2)α受容体刺激による陰性変力作用は、高濃度ウアバインにより抑制される。 3)α受容体刺激による陰性変力作用は、細胞外Na^+濃度の減少により抑制される。 4)単離細胞を用いた実験により、α受容体刺激はNa,Kポンプ電流には影響しない。 5)単離細胞を用いた実験により、α受容体刺激はNa/Ca交換電流を増強する。 以上の結果より、成熟マウス心筋におけるα受容体刺激の陰性変力作用のメカニズムとして、Na/Ca交換機構の増強が示唆された。この機構により細胞内Ca^<2+>濃度が減少する結果、陰性変力作用が出現するものと考えられる。1)と3)はこの機構に由来する細胞内Ca^<2+>濃度を増加させる処置と考えられるので、α受容体刺激による陰性変力作用が抑制されるものと考えられ、すべての結果が矛盾なく合致する。
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