リポ酸はグリシン開裂酵素系のH-蛋白、ピルビン酸、アルファケトグルタン酸及び分枝鎖ケト酸脱水素酵素複合体のアシルトランスフェラーゼの補欠分子族として、それら蛋白質の特定のリシン残基のイプシロンアミノ基に結合している。リポ酸が蛋白質に結合する反応は、リポ酸転移酵素によって触媒される。我々は既にウシ肝ミトコンドリアからリポ酸転位酵素を精製し、2種のアイソフォーム(I型とII型)を得ている。アミノ酸配列をリポ酸転移酵素I型についてはN末端から20残基まで、II型についてはN末端から30残基まで決定した。リポ酸転移酵素I型はN末端に更にアスパラギンが結合している以外II型のN末端アミノ酸配列と差異はなかった。リポ酸転移酵素II型のN末端から13-18残基及び25-29残基のアミノ酸配列から推定される塩基配列を用いて、2種のプローブを作製した。^<32>Pで標識したプローブを用いてウシ肝cDNAライブラリーをスクリーニングし、両プローブとハイブリダイズするクローンを得た。このクローンに含まれるcDNAの長さは1.3kbpであり、リポ酸転位酵素の全コーディングシークエンスを含むものと考えられる。その塩基配列について今後解析を進め、リポ酸転移酵素のアミノ酸配列を決定すると共に、大腸菌中で酵素を発現させ、その抗体を作製し、リポ酸転位酵素の諸性質や触媒反応機構を更に追究する予定である。
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