研究概要 |
グルココルチコイド・レセプター(GR)蛋白は、3つのドメイン、すなわちC末端側のリガンド結合ドメイン、DNA結合ドメイン、N末端側ドメインから構成されている。このうち、N末端側ドメインはGR蛋白の外郭を構成し、種々の核内蛋白質との相互作用に大きく関与していると考えられるが、その正確な働きは不明である。申請者は、精製GR蛋白と核やクロマチン、DNAとの結合アッセイ系を開発し、GR核結合促進因子(ASTP)と、3種類のGR核結合阻害因子(MTI-I,-II,-III)を発見し、精製した。促進因子ASTPについては、そのcDNAをクローニングし、一次構造を決定した。ASTPはGRと共にコアーヒストンを構成するヒストンH3,H4に非常に強固に結合することを見い出した。阻害因子MTI-IIIは、GR結合蛋白質で、DNA結合だけでなく、ヒストン結合をも阻害した。これら促進因子と阻害因子群は、クロマチン上でGRと多彩な蛋白質相互作用を発揮していると考えられる。GR蛋白の各ドメインが、GRE領域を含むDNAや促進因子、阻害因子群とヌクレオソーム上でどのように相互作用するかを解析する為には、GR各ドメイン蛋白質を多量にかつ高度に精製する必要がある。そこで、GR蛋白の各ドメインをコードするcDNAをRT-PCR法を用いてクローニングを行った。現在、クローニングしたGR各ドメインcDNAをGlutathion S-Transferase(GST)発現プラスミドベクターに組み込み、GST融合GR蛋白を大腸菌内で発現させ、Glutathionアフィニティクロマト及びDNAアフィニティクロマトで、GR各ドメイン蛋白質を多量精製している。
|