研究概要 |
動物細胞には多様なCRE(cAMP response element)結合蛋白質が存在することが知られている。CREはもともと細胞cAMP濃度の上昇に伴い、発現が上昇する遺伝子が有するエンハンサーエレメントとして同定されたものである。これまでに同定されたCRE結合蛋白質には私達が同定したCRE-BP1やMontminyらによって同定されたCREBがある。いずれのCRE結合蛋白質も、DNA結合ドメインとして塩基性アミノ酸クラスターとロイシンジッパーから成る、いわゆるb-zip構造を有し、ホモダイマーあるいはヘテロダイマーとしてDNAに結合する。CREBはcAMP依存性リン酸化酵素によって直接リン酸化されると、コアクティベータCBPと結合できるようになり、その結果転写を活性化する。一方、CRE-BP1はJNK(Jun Kinase)やp38のようなSAPK(stress-activated kinase)によってリン酸化され、活性化されることが知られている。CRE-BP1の生理機能を解析するため、ES細胞における相同組み換えを用いて、CRE-BP1の変異マウスを作製した。CRE-BP1変異ヘテロマウスには何らの異常も認められなかったが、CRE-BPI変異ホモマウスは呼吸困難のため生後すぐに死亡した。生まれるまでの胎児の成長・発生には異常は全く認められなかった。一連の解析の結果、胎児の肺には羊水が詰まっており、生後すぐに起る肺への空気の吸入が起らないことが分かった。これは胎児の時期に呼吸を開始して、羊水が肺に吸入されてしまうためと考えられた。またCRE-BPI遺伝子と構造の類似する2つの関連遺伝子CRE-BP1,ATF-aについてもES細胞における相同組み替えを用いて、変異マウスを作製した。
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