研究概要 |
ヒト白血病由来サイトカイン依存性細胞株M-TAT細胞に,トロンボポエチン(TPO)受容体であるMPLを導入し,TPOにより,増殖が支持され,巨核球系の表面抗原であるgpIIbIIIaの発現が誘導される細胞株を得た(M-TAT/MPL細胞).これらの細胞では,親株同様,EPOによる赤血球形質の発現の誘導も観察された.これらの細胞株を用いて,EPOとTPOのシグナルによって誘導される転写因子の解析を行った. M-TAT/MPL細胞では,RNA blotでみるかぎり,GM-CSF添加時にすでにGATA-1の発現レベルが高く,添加するサイトカインをTPOやEPOに変えることでヘモグロビン産生やgpIIbIIIaの発現が誘導されても,GATA-1mRNAの発現レベルに有意の変動は認められなかった.同時にDNA結合活性をゲル移動度遅延法にて検討したが,抗GATA-1,抗GATA-2抗体によってスーパーシフトしてくるバンドの濃度にも変化は認められなかった.次に,NF-E2 p45, MafK (NF-E2 p18), SCL/tal-1の発現量のTPO,EPO添加による影響をRT-PCRで検討したが,有意の変化は認められなかった.他の細胞株において,GATA-1やNF-E2 p45がTPO刺激により発現してくる例が報告されているが,M-TAT/MPL細胞においては,それらの発現量はTPO刺激以前に高くなっているため,TPOによる誘導が明らかでなかったものと思われる. 巨核球分化において重要な働きをしていると予想される転写因子としては,そのほかに,ETSファミリー等があり,現在それらについて解析中である.
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