研究概要 |
動物では蓚酸は主として肝臓においてグリコール酸から供給されるグルオキシル酸を前駆物質として生産されるが,グリコール酸の由来は不明である。グリコール酸は光呼吸の中間体であり,植物に多く含まれると推定される。ヒトにおける蓚酸生成への植物性食物由来のグリコール酸の関与の検討を目的として本研究を開始した。まず,簡便で精度の高いグリコール酸定量法の開発を目指し,昨年度はグリコール酸からグリコール酸オキシダーゼ(GO)の作用で生じるグリオキシル酸をチアゾリジン-2-カルボン酸に変えてからpicotagクロマトグラフィーで測定する方法を検討した。満足すべき精度,特異性は得られたが,手間と特に費用がかかるという欠点があった。そこで,本年度もグリコール酸定量法の開発を続行し,GOの作用によりグリコール酸から生じるグリオキシル酸をフェニルヒドラゾンとした後,K_3Fe(CN)_6による酸化で1,5-ジフェニルフォルマザンとして定量する方法を検討した。グリオキシル酸もGOの基質になるという欠点は,Tris緩衝液(pH8.3)を用いて反応を行い,グリオキシル酸をTrisとの付加物として補捉することで回避した。同じくGOの作用で乳酸から生じるピルビン酸はグルタミン酸:ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GIDH)-G6Pデヒドロゲナーゼ(G6PDH)系により除去した。幸い,Tris-グリオキシル酸付加物は用いた条件ではGO,GPTの作用を受けなかった。1,5-ジフェニルフォルマザンは515nmに強い吸収を持ち(εmM=40),且つ基質特異性が明らかなGOを用いているため,今回開発した方法を用いると1nmolという高い感度でもってグリコール酸の特異的な定量が可能であった。現在,蓚酸生成への植物性食物由来のグリコール酸の関与の検討に取りかかっている。
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