本研究はミトコンドリアの形態変化、特に巨大化に関与する分子群を、分子生物学的方法論を用いて根こそぎ単離・同定することを目的としてきた。特に、酸性リン脂質合成に関与する酵素群及びその活性調節に関与する分子が、ミトコンドリア巨大化の鍵を握っていることを証明することに重点をおいてきた。本研究はミトコンドリアと核の間のクロストークを扱い、ヒドラジン投与による肝臓ミトコンドリアの巨大化という、申請者が長年にわたって確立してきたモデル実験系を用いてこれを解明する予備実験を行った。本研究により、肝ミトコンドリア巨大化を誘起する条件下でfatty desaturase(△9)の発現が起こっていることをRT-PCRにより確認することが出来た。今後は、(1)ミトコンドリア巨大化を引き起こす分子のクローニング、(2)mRNA発現量の解析、(3)培養細胞を用いた機能解析、等の実験を引き続き続行する。酸性リン脂質合成に関与する酵素群及びその活性調節に関与する分子が数多くクローニングされることが期待でき、アルコール肝障害をはじめとしたミトコンドリア巨大化を生じる様々な疾患の病態解明に大きな意識を持つ。
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