研究概要 |
1,ラット精巣の長鎖アシルヒドロラーゼ(PLA1、PLA2、リゾホスホリパーゼ、リパーゼ)活性の特異性を内因性基質と外因性基質を用い検討し、本臓器の主要なホスホリパーゼAはアルカリ性領域に至適pHがあり酸性リン脂質に特異性の高い酵素であることを明らかにした。現在この酵素の精製を進めているがカラムなどへの非特異的な吸着により非常に回収率が悪く精製条件を再検討中である。 2,ラット精巣PLAとその酵素学的性質を比較するため小腸ホスホリパーゼBの触媒機構を部位特異的変異法と親和標識法によって解析した。小腸酵素は4個の反復配列からなるが、第二反復配列にのみPLA2、リパーゼ、リゾホスホリパーゼ活性を触媒するための活性中心が存在する。これらの活性は、diisopropyl fluorophosphonate、methyl arachidonyl fluorophosphonate、arachidonyl trifluoromethylketoneによりほぼ完全に阻害されたことからリバーゼファミリーの酵素と同様にSerが触媒基と推測された。リパーゼファミリーではこのSerはコンセンサス配列GXSGXに位置することが知られているが、この条件を満たすPLB/LIPの2カ所のSerを部位特異的変異法によりAlaに変えても活性は保存されていた。ところが第2反復配列のN末端に近い第404位のSerをAlaに置換すると完全に失活した。このSerは、配列GDS内に位置していた。これは最近新たに提唱された細菌リパーゼファミリーの特徴と一致していた。またこのファミリーではcatalytic triadの一つのAspは配列GXND内にある。PLB/LIPでは第518位のこのモチーフ(GGND)のAspに担当し、これをAsnに置換すると約80%活性が減少した。これらの結果から、PLB/LIPは、GDSモチーフに触媒基Serがある新しいリパーゼファミリーに属することが明らかとなった。 3,小腸ホスホリパーゼBの大量発現系をバキュロウイルス系を用いて構築している。
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