研究概要 |
血管内皮細胞(ヒト臍帯静脈由来)、血管平滑筋細胞(ラット大動脈由来)をCO_2インキュベータ-で培養し、活性酸素種を負荷(O_2:Xanthine-Xanthine oxidese、H_2O_2、NOなど)したところアポトーシスの誘導が観察された。アポトーシスの誘導はNO(peroxynitrite)、H_2O_2、O_2の順に強かった。アポトーシスの発生についてはDNAの断片化のみならず、アポトーシス小体の観察など電子顕微鏡を用いた形態学的な確認も行った。また従来より血管内皮細胞に対してアポトーシスを特異的に誘導することで知られているヘビ毒を加えたところ、アポトーシスとともに細胞内の過酸化物の増加が2′,7′-dichlorofluorescin diacetate(DCFH-DA)を用いたフローサイトメトリーで確認された。これらの細胞に細胞内グルタチオン濃度を低下させるButhionine sulfoximine(BSO)を添加すると細胞死は加速し、グルタチオンエステルの添加により部分的に改善した。またCu,Zn-SOD阻害剤であるDiethyldithio-carbamate(DDC)の影響はグルタチオン阻害に比し軽微であった。またMn-SODを誘導するホルボールエステル、TNFを添加したところBSOによるアポトーシスが抑制された。また高血糖下の培養ならびにアセチル化LDL添加によって細胞内過酸化物は増加し、アポトーシス刺激に対して脆弱となった。以上より血管内皮細胞のアポトーシスには活性酸素が関与しており、グリタチオン、Mn-SODなどの抗酸化物質が保護的に作用していることが明らかになった。また高血糖や変性LDL存在下でのアポトーシス感受性が高まり、動脈硬化発症機作との関連が示唆された。
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