1.日本の無ガンマグロブリン血症(XLA)における責任遺伝子Btkの変異の解析を行った。 (1)日本のXLA家系の過半数にあたる35家系におけるBtkの遺伝子変異を同定し、報告した。それらにより、Btkのミスセンス変異(1アミノ酸置換)には2ケ所の集積点が存在することがわかった。また、何症例かにおいてはBtk cDNA自体には異常が無いにも関わらず、そのmRNAの発現が非常に減少していることを示した。さらに非典型的な症例の生じる分子機序についても知見が得られた。 (2)抗Btkモノクローナル抗体によるフローサイトメトリー法を用いてXLA患者35家系におけるBtk蛋白質の発現を解析した。その結果、大部分の症例でBtk蛋白質の発現は極端に減少しており、XLAにおけるBtk変異の帰結は多くの場合Btk蛋白質の不安定化であることが示された。さらにこのような蛋白質発現の解析が保因者診断にも有用であることを示した。 2.Btkと相互作用する分子を同定し、Btkの関与するシグナル伝達経路を解析した。 (1)BtkのSH3ドメインと結合する新規蛋白質C15をクローニングした。そしてC15はプロリンに富んだ配列を介さずにBtkのSH3ドメインと結合することを示し、またC15の染色体上の位置を決定した。 (2)BtkがWASP(Wiskott-Aldrich症候群の責任遺伝子)と結合し、さらにWASPをリン酸化することを示した。さらにリン酸化されたWASPの機能についても新しい知見を得た。また、Btkが非レセプター型のホスファターゼによってその活性が制御されること示した。
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