研究概要 |
筋緊張性ジスロフィー症は常染色体優性の様式で遺伝する筋肉疾患であり、最近その発症と関係の深い候補遺伝子が単離された。さらにコードされる蛋白質は蛋白質燐酸化酵素であることが示唆されているが(ミオトニンキナーゼ)、その実体は明らかでない。そこで我々はこの酵素をウサギ骨格筋から精製し、その特徴を明確にすることを試みた。その結果、ホモジネートの7,000g__-沈澱画分を可溶化したフラクションにH1ヒストンキナーゼ活性を認めた。基質非存在下で[γ-^<32>P]ATPと反応させると電気泳動上分子量7万付近に放射性蛋白バンドが検出され、さらにペプチド抗体を用いた解析でも同様のバンドが認められた。この値は遺伝子構造から予想される完全長の分子の大きさに近いことからさらに精製を進めた。DEAE-Sephacelカラムクロマトグラフィーで得られた3つのピークの内最も活性の高い2番目のピークをさらにH1ヒストンセファロースカラム、ヒドロキシアパタイトカラムで精製し、収率20%で,比活性は約100倍まで上昇した。この酵素の分子量を計算すると約48,000となり精製開始時の予想よりやや小さい値となっている。またAキナーゼの阻害剤によって活性は影響を受けないが、Cキナーゼの阻害剤では抑えられた。しかし環状ヌクレオチドやカルシウム・燐脂質・ジアシルグリセロールは直接活性には影響を及ぼさなかった。これらの結果は精製したH1ヒストンキナーゼがCキナーゼと類似している可能性を示唆しているが、本来ミオトニンキナーゼは構造的にAキナーゼやCキナーゼと関連のあることが指摘されており、今後特異性の明確な抗体の使用により決着をつけたい。本酵素の基質特異性についても併せて解析していく予定である。
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