研究概要 |
チミジンホスホリラーゼは血管新生活性以外の生理活性をもっているか否かを調べる目的でジーンターゲテイングを試みている。多くの癌組織におけるチミジンホスホリラーゼの発現は周辺の正常組織に比べ高い。またいくつかの予備実験より、チミジンホスホリラーゼは血管新生活性以外にも腫瘍増殖において有利に働くような生理活性をもつと予想される。 今までにマウスのチミジンホスホリラーゼ遺伝子のクローニングを終え、3種類のターゲテイングコンストラクトを作成した。そのうち一種はチミジンホスホリラーゼ遺伝子のコ-デイングリージョンをすべて欠失させたものでその部分にネオマイシン耐性遺伝子を挿入した。またネガテイブ選別をするためにジフテリアトキシンAフラグメント遺伝子をターゲテイングコンストラクトのベクター部分に挿入した。他の2種はチミジンホスホリラーゼ遺伝子の第一エクソンから第4エクソンの途中までを欠失させたものである。この部分にはチミジンホスホリラーゼの酵素活性に必須のアミノ酸が2個含まれている。また第一メチオニンは第2エクソンに含まれる。今後これらのうち2種類のコンストラクトをES細胞に遺伝子導入し、ネオマイシンによるポジティブ選別、ジフテリアトキシンによるネガテイブ選別を行った上、NheI,NdeI,MunIなど第一エクソンから第4エクソンの途中までを欠失させたことにより切断サイトが失われた制限酵素を用いてゲノミックDNAのサザンハイブリダイゼーションを行いノックアウトアレレを同定する。このES細胞をマウスの8細胞期胚に凝集法により添付させる。この胚をマウス子宮に戻してキメラマウス、ノックアウトマウスを作成する。ノックアウトマウスの表現型を正常マウスと比較する。癌を多発するLarge T antigenのトランスジェニックマウスやP53のノックアウトマウスなどとかけあわせ癌の罹患率が変化するか調べる。またチミジンホスホリラーゼは核酸の代謝においてサルベ-ジ系路で働く酵素であるが、デノボ系路の遮断薬を投与した場合にノックアウトマウスで何らかの変化がみられるか検討する。
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