研究概要 |
我々はヒト骨におけるエストロゲン産生、代謝を検討する目的で16例(男性2例、女性14例、62±5.2歳)のtibiaにおいてアロマターゼ(arom)及び17beta-hydroxysteroid dehydrogenase I(17 β-HSDI)の発現を免疫組織化学、mRNA in situ hybridizationを用いて検討し、あわせて28例の肋骨、腰椎及び大腿骨(男性16例、女性12例、58.0±11.3歳)におけるaromatase mRNAの発現量、exonlの選択性をRT-PCRを用いて検索した。 arom,17β-HSDI共に骨のresting osteoblast,lining cells及び関節軟骨で発現しており、osteoclastsではこれらの発現は全く認められなかった。又骨髄の脂肪細胞でもarom、17β-HSDI共に著名な発現が観察された。 aromのmRNA発現量は非常にばらついた値(11.25±9.77、0.61-42.84attomole/ng of total RNA)を示した。aromの発現量と年齢、性別の間に有意の相関関係は認められなかったが、患者のosteoporosisの程度と有意の(p<0.05)相関を示した。しかしosteoporosisが進行した症例では骨間での脂肪組織も増加する為、このaromの増加が骨細胞によるものなのか脂肪細胞の増加によるものなのかは今後の検討が必要と思われた。aromのexonlの選択性ではfibroblast typeの1bを用いている症例が大部分であった。このように骨組織においてaromは広範に分布しており、骨量の維持他において重要な役割を果たしている事が想定された。
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