研究概要 |
【目的と方法】 一般に乳腺特に乳管癌の前癌病変についてはこれまで、異型乳管過形成(ADH)が広く考えられているが、こうした病変とよりlow riskな病変や非浸潤癌や浸潤癌のclonalityや、乳癌のoncogensisに深く関係すると考えられるcyclinD1なのどの増幅や発現を調べ検討することは重要である。これまでの検討では過形成のあるものには異型のある部分のみならずmonoclonalityが観察される症例がみられ、またADHがmonoclonality有することは、他施設からの検討で報告されつつある。一方浸潤性乳管癌cyclinD1発現は30%程度みられたが、DCISではむしろそれより高く、一方ADHではほとんど見られないとの報告もある。 我々は乳癌特にlow grade DCISの前癌病変として、新たに、高円柱の細胞よりなる異型嚢胞状小葉(atypical cystic loble ; ACL)について注目しており、ACLの頻度やestrogen receptor(ER),progesteron receptor(PR),cyclin D1の発現などを検討した。 【結果と考察】 乳癌が一つのterminal unit全体の異常を背景にして、終末細乳管レベルから発生するという観察から、異型嚢胞状小葉(ACL)を提唱した。ACLは拡張した腺房から成る大きさ1-2mmのTDLUで、上皮は高円柱状で、偽重積した核と好酸性の細胞質を有し、筋上皮はまれに見られるものである。1)ACLはLow Grade DCISの36%、lobular carcinomaの29%、fibrocystic diseaseの3%に合併した。2)ACLはER,PgR,cyclinD1それぞれ陽性であり、その性格はApocrine metaplasia(ER-,PgR-,cyclinD1-),Blunt duct adenosis(ER+,PgR+,cyclinD1-)よりはLow Grade DCIS(ER+,PgR+,cyclinD1+)に近い。3)しばしはmacropapillary DCISの辺縁にACLが存在する。以上はACLの前癌的性格への示唆を与えている。
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