研究概要 |
悪性リンパ腫の腫瘍細胞起源はこれまで正常細胞との細胞形態学的類似性や免疫形質発現の共通性によって推測されてきたが、近年、細胞膜免疫グロブリン発現を異にするBリンパ球の免疫グロブリン遺伝子V領域のSomatic mutation(SM)の検索によりBリンパ球の分化段階とその分布が明らかにされ、我々はこのことが腫瘍細胞にも応用できることを明らかにしてきた。今回、低悪性度MALT typeリンパ腫の典型例9例につきパラフィン包埋材料より抽出したDNAを材料としVHプライマー(FR2A)およびJHプライマー(LJH,VLJH)にてseminested PCR法を行い、その増幅産物のシーケンスを既知のVH germline遺伝子と比較しSMを検索。さらに、サブクローニングにてintraclonal diversityの有無を調べた。 その結果、IgH遺伝子のV領域(CDRII,FWIII)には1〜16のSMがみられ、その平均は検索した領域の6.5%であった。またサブクローニングにてintraclonal diversity(ongoing mutation)は認められなかった。SMの程度はこれまでの研究成果(pre-germinal center由来のB-CLLやMantle cell lymphomaではSMは無く、germinal center由来の濾胞性リンパ腫ではSMは高度でかつongoing、post-germinal center由来と思われるびまん性大細胞型リンパ腫ではSMが高度でintraclonal diversityは無い)との比較においては中等度であり、かつMALT typeリンパ腫の腫瘍細胞はsIgM陽性、sIgD陰性であることから、その腫瘍細胞は抗原提示の場である二次リンパ濾胞胚中心を早期に逸脱したsIgM陽性のクラススウィッチの起こっていないmemoryB細胞に由来すると考えられた。 ミクロマニュプレーターを用いたHodgkin病の特異細胞のsingle cellレベルでのIgH遺伝子の解析は進行中である。これまでに培養細胞にて個々の細胞のIgH遺伝子の検出は成功しており、現在切片上より個々の細胞をピックアップして検索を行っている。
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