骨巨細胞腫瘍とは骨に発生する良性腫瘍の一種で、組織学的に、単核のstromal cellと多核のgiant cellという2種類の細胞成分より腫瘍が構成されているというユニークな特徴を持つ。giant cellと破骨細胞の類似性に関してはいくつかの報告があり、少なくともgiant cellは破骨細胞へ分化した細胞と考えられるが、stromal cellも破骨細胞系に属す細胞か、またgiant cellがstromal cellから発生するのかに関しては、明確な結論は得られていない。 我々は既に骨巨細胞腫瘍培養細胞を抗原とするモノクローナル抗体を作製し、これらの認識する抗原の正常組織での分布を免疫組織化学的に検討し、骨巨細胞腫瘍は破骨細胞系と共通する抗原を発現していることを見いだした。本研究では、これらのモノクローナル抗体の認識する抗原を抽出し、アミノ酸分析を行い、既知の物質との異同について検索し、骨巨細胞腫瘍のstromal cellとgiant cellの相互関係、また、これらの細胞と正常な破骨細胞系との関連性を調べることを企図した。 本年度は、骨巨細胞腫瘍の培養細胞を用いて、単核細胞から多核細胞が生じるかどうかを検討した。骨巨細胞腫瘍細胞を緑色と赤色の二種類の蛍光色素で別々にラベルし、その後に混合して培養した。二週間後、蛍光顕微鏡により観察し、黄色に染色された多核巨細胞が出現することを観察した。このことから、giant cellがstromal cellの細胞融合によって出現する可能性が示唆された。 骨巨細胞腫瘍培養細胞から我々の作製したモノクローナル抗体の認識する抗原を抽出し、アミノ酸配列を分析することも試みているが、今年度は結果を得るには至らなかった。来年度以降、さらに実験を係属する予定である。
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