今回、破骨細胞の多核化及び機能の発現に関与していると考えられているE-カドヘリン及びOB-カドヘリン、CD44の骨巨細胞腫における破骨細胞様多核巨細胞形成への関与を明らかにするために、外科切除材料及び初代培養細胞株におけるこれらの分子の発現について、RT-PCR法及びNorthern blot法により検討を行った。また、E-カドヘリン及びCD44については、酵素抗体法によりその詳細な組織内の局在を検討した。3細胞株及び21検体を用いたRT-PCR法の結果、CD44H(standard form)の発現が全ての検体で認められたが、スプライシングバリアントは確認できなかった。酵素抗体法の結果、CD44Hは単核反び多核の腫瘍細胞の細胞膜に陽性であった。また、OB-カドヘリンは細胞株では発現が認められなかったが、外科切除材料では正常型及びバリアント型ともに発現がみられ、正常型の発現が優位であった。E-カドヘリンの発現は骨巨細胞腫では認められなかった。 破骨細胞の表面形質であるCD44Hを共に発現していることから、骨巨細胞腫の破骨細胞様多核腫瘍細胞と単核の細胞は共に破骨細胞への分化を示すと考えられる。しかしながら、破骨細胞では血管側細胞膜でのみその発現がみられることから、破骨細胞様多核腫瘍細胞は少なくとも機能的には最終的な分化段階には至っていないと思われる。CD44が破骨細胞の多角化に必要であるという報告もみられるため、骨巨細胞腫においても同様の機構が存在する可能性がある。また、骨巨細胞腫では、破骨細胞で発現がみられているE-カドヘリンではなく、OB-カドヘリンが発現しており、このことが骨巨細胞腫の腫瘍発生に関与している可能性が示唆された。
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